遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産分割の方法を決める協議のことをいいます(一人でも欠けると無効となります)。
遺産分割協議の方法や書面の作成方法によって、無効になったりトラブルが生じたりするおそれがありますので、事前にしっかりと調査をするか、または専門家への相談が重要になります。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の書き方は、法律で決まっているわけではありませんが、正確性や真実性を証明するために以下のような内容で作成します(一例です)。
文面はパソコン(または手書き)で作成し、住所と名前は手書きで、押印は実印でします。
また、名義変更等の手続きで遺産分割協議書が必要となる場合、印鑑証明書の提出も求められますので、事前に印鑑証明書を各相続人が取得しておくことをお勧めします。
出生年月日 昭和*年*月*日
死亡年月日 令和*年*月*日
最後の住所 福島県郡山市**番地*
最後の本籍 福島県郡山市**番地*
債務(借金・住宅ローンなど)がある場合
債務は遺産分割の対象とはなりません。
故人の債務は、遺産分割を待つまでもなく、法定相続人に法定相続分の割合で当然に相続されます。
しかしながら、遺産分割協議によって債務の分割方法を決めることも可能で、この場合には債務の引受けがあったとみなされます。
もっとも、この債務引受には各債権者の承諾が必要で、この承諾がない場合、債権者はこれを無視して法定相続人全員に請求することができます。
遺産もいらないし債務も負いたくない、というのであれば相続放棄という手段が有効ですが、相続放棄の影響によって思わぬトラブルが生ずるおそれがあるので慎重な判断が必要となります。
また、住宅ローンについては、契約時に団体信用生命保険(団信)に加入していた場合、残額の返済が不要となることがあります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合でも、遺言の内容と異なる遺産分割協議ができます。
ただし、以下の条件をすべて満たす必要があり、一つでも条件を満たさなければ、せっかく合意した遺産分割協議が無効になる恐れがあります(合意の内容に不満を持った相続人があとになって無効を主張しだすというケースがあります)。
- 遺言書の内容に、遺産分割を禁止する旨の記載がないこと
- 相続人全員が、遺言の内容を知った上でこれと異なる分割を行うことに同意していること
- 相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者が同意していること
- 遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、または、遺言執行者の同意があること
- 特定の財産を相続人に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)でないこと
相続人の中に未成年者がいる場合
未成年者の親権者が代わって遺産分割協議に参加します。
ただし、その親権者が同時に相続人でもある場合は、代わって参加することができません(利益相反)。
この場合、家庭裁判所に特別代理人の選任の申し立てをする必要があります。
これをしないで行なった遺産分割協議は無効となります。
相続人の中に行方の知れない人がいる場合
家庭裁判所に、失踪宣告の申立て、または、不在者財産管理人の選任の申立てを行う必要があります。
失踪宣告は、失踪者を亡くなったものとして取り扱うための手続きで、慎重な判断が必要です。
また、不在者財産管理人の申立ては、申立人に予納金(20万円〜)の負担義務があることに加えて、選任後に更に遺産分割協議に参加するための家庭裁判所の許可が必要になるので、注意が必要です。
これらのいずれの手続きもしないで行なった遺産分割協議は無効となります。
相続人の中に認知症の疑いがある人がいる場合
認知症や精神上の障害などで判断能力を欠く相続人がいる場合、家庭裁判所に後見人の選任の申し立てをする必要がある可能性があります。
これをせずに遺産分割を行なった場合、協議の内容に不満を持った一部の相続人があとになって遺産分割協議の無効主張をしてくるなど、将来トラブルが発生するおそれがあります。